Kodak E100ファーストロールと湘南の朝

Kodak E100ファーストロールと湘南の朝

2021-06-07

忘れられない1ロールがある。

私が一番好きなフィルム、Kodak E100のファーストロール。

1度はディスコンになったものの、再販売となったE100。

再販売直後に2箱購入した私は、バケペンにE100詰め込んで意気揚々と湘南 鵠沼海岸へと乗り込んだ。

そんなKodak E100でのファーストロールを全て掲載。


1枚目

7:00頃、少し雲が多いけど太陽が姿を見せてくれて嬉しい。そんな冬の朝。

フィルムなのでデータは残っていない。撮影日も時間も設定値もわからないのは自分の怠慢。

2枚目

ちょうど雲に太陽が隠れたとき。露出はアンダー。でもそれはそれで。

これ以上の撮れ高はないと判断して帰路につく。

2枚目から何日後の朝だろうか。海岸に着いた私は全力ダッシュをしていた。

3枚目

走っているときシャッター音が響いたことをはっきり覚えている。

シャッターを聞いてバカ野郎と思うのはほんの一瞬。この空を見たら失敗はどうだって良くなる。

4枚目

ポジションを決め、三脚を立て、シャッターを切る。

ファインダーは吐息で曇り、ピンボケとなる。

だけどそんなことはどうでもいい。とにかく目の前の景色を収めたい一心の私。

5枚目

ファインダーは曇り、レリーズを持つ手は震え、波に浸かった足は冷え切っていく。

砂と波を見極めて、親指に力を込める。

ガシャッコン。

その瞬間、冬の寒さもお金もぶっ飛んでいく。

6枚目

少し下に向けてもう1枚。

デジタルデータは黒つぶれでも、生のポジは滑らかなグラデーションを見せてくれる。

7枚目

サーファーが横切る。シャッターを切る。そしてシャッター音を聴いて思い出す。

スローシャッター・・・。

8枚目

ローポジションに下げる。

波の形も色も愛おしい。ルーペを覗けばそこに波がある。

9枚目

波に襲われる1秒前。波の音が聴こえてくるよう。

10枚目

絞りは開放にして手持ちへ。

カメラを支える指は砂浜に触れる。

息を止めて波を待つ。

ガシャッコン。

撮影終了。

立ち上がって砂を払い、吐息で指先を暖める。

氷のように冷たいPentax 6×7を開きE100を回収。

形容しがたい満足感に浸りながら太陽を待つ。


某家電量販店経由でKodakに現像を依頼したフィルムは10日ぐらいで手元に帰ってきたのだと思う。

店頭の大きなライトボックスに広げた瞬間からニヤけ顔が止まらなかった。

ガシャッコンには1枚300円程度のコストがかかる。

だけど、それだけの価値が込められたフィルムだと確信を持って断言する。